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自分の家に、同居人が出来てから数日。秋人は、不自由の無い生活を送っていた。美月は本当に不思議な女だった。見た目で言えば、彼女に家庭的な雰囲気など一切無い。朝晩の食事や掃除を勝手にやってくれる。そして、本当にこちらが声をかけないかぎり、話し掛けてくることもなかった。ただし、ジィーと見つめてまとわりついてくるのものだから、結局構ってやっているのだが…。
「美月、昼は何してるんだ?荷物ないくせに、服が毎日違うな?」
「んー、仕事とか買物。」
眠る前、時間が余ったので美月をかまってみた。呼ばれると、決まって満面の笑みを浮かべる。
「何の仕事だ?」
「秘密。」
また、これだ。眉をしかめると、秋人は問いただす。
「犯罪者?」
「だから、違うって!ちゃんと合法的な仕事。」
「怪しいものだ。」
「大丈夫だからっ!」
「…いいか、俺は大学の講師なんだ。俺の経歴に差し障るような非合法な仕事なら、即刻出ていけ。」
「うん…。」
切れ長のつり目が、さらにつり上がっている。美月のほうは、歯切れの悪い返事をしてから、何か考えこんでいるようだった。コイツ、家に置いておいて大丈夫なのか?今更だが、心配になってきた。
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