†野良猫来たりて†

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深夜に帰宅した自分も悪いが、他人の駐車スペースでくるまって眠っているヤツは、どうしたらいい?車から降りて確認する。香水の代わりにアルコールの匂いをプンプンさせた女だった。泥酔しているためか、ほとんど意識がないようだ。邪魔にならない場所に移動させると、さっさと車を止めて玄関ホールに入る。 「まったく、邪魔だ💢」 自分の部屋に辿り着いた頃には、日付がすでに切り替わっていた。今日は、顧問として、ゼミの飲み会に嫌々参加させられた帰りだった。藤宮 秋人(フジミヤ アキト)伯父が理事長を務める大学で、助教授をやっている。情報システム論を教えるのが仕事だ。“教える”仕事をしているが、正直なところ“人付き合い”は苦手だった。だから、今日のような飲み会の後は、決まってナーバスだ。 「今日は、ジムに行く予定だったのにな。」 シャワーを浴びると、さっそく新着メールの確認を始める。ふと、窓の外に目をやった。ちらりちらりと小雪が舞っている。そういえば、駐車場の女はどうしただろう?きちんと目を覚ましただろうか?いつもなら、他人の事など気にしないのだが、この日に限って妙に気になった。
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