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「美月、いつまで此処に住む気だ?」
「え?あ…うん。ちゃんと、考えてるよ。秋人の邪魔になるようなら、出ていくから…。」
「ああ、“しばらく”の約束だったハズだからな。」
「うん。」
美月は、いつもの調子で微笑んでいる。本当に解っているのか怪しい。これ以上俺になつかれても、困る。
『藤宮先生、なんか良いことあったんですか?』
『?、何もないが…?』
『なんか感じ変わったような気がしますよぉ。』
『彼女が出来たとか?!』
『くだらない。私にそんな相手は必要ない。』
秋人は、昨日ゼミの帰りに交わした会話を思い出していた。
朝食を済ませスーツに着替える。いつものように出掛けようとすると、めずらしく美月がついてきた。
「私も出掛けるよ。」
「めずらしいな。」
「用事あるんだぁ。」
二人揃って外に出た、その時だった。
「藤宮先生。」
バタン、と車から降りてきたのは、大学で事務をしている女性だ。名前は…なんだっただろうか?
「ごめんなさい、待ち伏せちゃって。急いで渡したい書類があって、ご自宅が私の家の近くだと聞いたものですから、直接お渡ししようと思って。」
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