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抱き締める腕に力が入り、美月は秋人の肩に顔をうずめた。耳元で、秋人がささやく。
「昔、結婚したいと思うほど好きになった女がいた。大学の、同級生だ。」
秋人の手が、やさしく美月の髪を撫でる。
「俺は、周囲の期待どおりの道を進んでいた。望まれるままに進学し、決められた先に就職する。自分のことより、他人の顔色ばかりうかがっていた。」
美月は、静かに聞いている。
「そんなクダラナイ俺に、美人だと人気だった彼女が近づいてきた。彼女は、俺にやさしく尽くした。だから、俺は彼女を好きになり告白して、付き合った。だがな…。」
ふぅ、と溜息が右耳にかかった。
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