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ジムに寄り、家に着いた時には九時を過ぎていた。鍵を開け、中に入る。
「おかえりなさい。」
「!…まだ居たのか。」
「だって、まだお礼してないし、食事食べない?」
見れば、テーブルに料理が並んでいる。手のこんだものではないが、美味しそうではある。
「作ったのか?」
「うん。」
さっそく、メインの海老マヨ炒めを一口食べる。
「うまい。」
「でしょ?冷蔵庫、サプリメントしか入ってないんだもん、買い出してきたんだから。」
「ああ、俺一人ならそれで十分…お前、どうやって部屋に入った?」
このマンションは、セキュリティーがしっかりしていて玄関ホールもカードキーがなければ入れないし、何よりそれぞれの部屋には、暗証番号と指紋の認証が合わなければ入れないはずだった。
「秘密。」
「お前、窃盗犯か?」
「違う!それに、私の名前は…“美月”(ミツキ)だよ。」
妙な間があった。きっと、偽名なのだろう。美月は、じっとこちらを見つめてニコニコいる。
「藤宮サン、下の名前教えてください。」
「表札を見たのか。秋人だ、藤宮秋人。」
テーブルの料理をほぼ平らげた頃、急に真剣な顔つきになった美月が突然きりだした。
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