序章『出会いと幽霊は突然に』

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 今、チラシと目の前のビルを交互に眺めるこの青年。  彼の名は空浄良久(クジョウ ヨシヒサ)。  大学1年生、身長、体重、容姿、その他諸々これと言って特長はない。  彼がこんなに所にやって来たのは理由がある。そう……幽霊を殺してもらう為。  果てしなく胡散臭い事をしている自覚は十分有る。  こんな事を思うくらいなら、逸そ精神病とでも宣告してもらったほうが楽だ。  世界立東京国際大学、通称『世大』の理科三類生態物理学専行。  最近出来たばかりのこの大学こそ、空浄良久が通う大学。  世界中から金を出し合って有能な人材を育てる為に設立された世界最初の世界立大学であり、同時に世界一の難易度を誇る、言ってしまえば超エリート大学。  入学の為の苦労は尋常ではなかった。  そんな超エリートのしかも空浄の専行は、生物が進化の過程でどのように外的、内的能力を習得、放棄し、またそれは何故なのかを研究する言わば理系。  そうでなくても、相談したら白い目で視られるに決まってる。『幽霊を信じるか?』なんて。  空浄は現実主義者だ。  墓場の火の玉は、死体から出たリンに過ぎない。  雪男なんて所詮ブロッケン現象。 バミューダトライアングルは宇宙風が差し込んだせいで計器が狂ったまで。  300年程前までは、魔法だと神の奇跡だのと言われた物なんて、現代科学の前には確率論と自然現象で話が付く。  そうは考えていても、空浄だって馬鹿ではない。  ちゃんと根拠が有れば信じる。  例えば……幽霊に取り憑かれるとか。    
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