序章『出会いと幽霊は突然に』

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『ねぇヨッシー、本ッ当に入っちゃうの? ねぇもう帰ろう。なんか怪しいし』  お前の方が遥か怪しい。と、頭の中に聴こえる清楚感溢れるまさしく大和撫子のような声に心でツッコミを入れる。  別段空浄が幻聴障害持ちだとか、二次元に恋するイタイ青年というわけではない。  この声、聴こえる人には聴こえる……らしい。  世間一般でいう霊能者、というチュパカブラ並に存在が胡散臭い人物達には。である。  このボケ待ちとも言える解答にはツッコミを入れたいのだが、この声が聴こえる者は殆どいなくても、空浄が声を出してツッコんだ場合、物理的に空気が音波によって振動する為、世間一般の人々にも聴こえてしまう。  街中で勝手に1人でツッコミを入れる光景は……想像するだけで痛々しい。  仮に誰も見ていなくても、かなりキツいものである。 (本当……なんだってんだよ)  半信半疑どころか九分九里有り得ないと思いつつ、空浄はオフィスビルの中へと入って行った。    
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