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家の縁側でごろりと横になっていると、冷たい空気が顔を掠めた。
同時に金木犀の香りが、風に乗ってくる。
「紅葉(モミジ)……、お使いいかん?」
今年七十五になる祖母が、寝転がっていた私の顔を覗き込んで微笑んだ。
「いいよ、何買っちくるん?」
「線香と小豆かっちきちくれんかぇ。明日は彼岸の入りやけん、墓参りいかんないかんけんなぁ」
「わかった。おはぎつくるんやね。じゃあちょっといっちくるわ」
そういえばもうそんな時期かと身体を起こしながら外を見る。家の庭には、鶏頭(ケイトウ)と彼岸花が我を競って咲き誇っていて、その横に楚々と咲き始めた金木犀が植えられている。
博多にいた時は感じられなかったものがここにはある。
やはり……。
「七ツ森は綺麗………」
「あの古墳?」
「そう……」
「彼岸花が沢山咲いてんだっけ?」
ふ~んと聞き流して、私は玄関へと向かった。
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