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手は冷たかった。
その手を掴んだ瞬間ふわりと浮いた。
「わ……」
世間一般でお姫様抱っこと呼ばれるそれをされた私は、安定の悪さに思わず抱き着いてしまった。
「五才のときから変わってないんじゃないのか?少し痩せすぎだ」
五才?そういえば小さい頃こんな一面の彼岸花を見た気がする。
祖母と歩いた……そこで。
そこで……。
「銀杏(イチョウ)……」
私がそう呼ぶと灼熱の瞳が笑った。
「思い出したのか……なら……少し私に付き合え」
持ち上げられた時と同じように優しくおろされると、そこはもとの七ツ森とは違う。
地平線まで続く彼岸花の原。
空には月が浮かぶ。
夢でもすごい。
「夢ではない、紅葉は、二度も異界に迷い込んだんだ……また迷いがあるか?」
手は繋いだまま、銀杏は聞いた。
見透かしたような目。
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