名もない犬

僕

僕の名前は決まっていないんだ。

パパとママの顔もわからない。

気付いたら兄弟達と一緒に狭い箱に入れられて，ここにいるんだ。

この箱は壁が高くて，外が見えない。見えるのは上のほうにある大きな空だけなんだ。
食べ物もないんだよ。

そしてこの箱の中はね，すごく寒いんだよ。だからいつも兄弟達とくっついて寝るんだ。それでもまだ寒いんだけどね。

時々，空から白くて冷たいものが降ってくるんだ。綺麗なんだけど，そのときは本当に寒いよ。

でもね，兄弟達がいるから安心だよ。
なにがあっても心配ない。
そう思えるんだ。