915人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
「本日は我が茶道部に体験入部をして頂き、誠にありがとうございます。今回亭主を勤めさせて頂きます、二階堂【ニカイドウ】でございます。点前は濱夏でございます……本来は部長が亭主を勤めるんだけどね」
お茶の道具を一通り揃えた綾女の後を続けるように現れた男子に、ぽかんと呆気にとられていれば、目の前に菓子が運ばれる。
菓子を置き、お辞儀する男子に取り敢えずお辞儀をすれば、有坂さんに頷かれた。
「本日のお菓子は私【ワタクシ】の最高傑作、練切で“紫陽花”でございます」
て、手作り!?細か過ぎる……。
「紫【ムラサキ】くんのご実家は、老舗の和菓子屋なんですよ」
「何か凄いですね……」
食べるのが勿体無いくらい綺麗なのに、綾女に菓子をどうぞ……なんて勧められる。
「美味しい!!」
「ありがとうございます」
オレの喜びの声に、紫さんがニコリと微笑む。
「紫はん、お茶を……」
スッと綾女が座る畳の隣にお茶が出され、紫さんがお茶を運ぶ。
「次客様には、お代えのお茶碗で煎れさせて頂きます」
綾女はオレに向かい、小さくお辞儀した。
「終始お辞儀だらけ……」
「お辞儀も三種類有りますから、後で覚えましょうね」
有坂さんがお茶碗を二回半回し、ごくりと喉を鳴らして茶を飲む。
「……!!濱夏くん、抹茶がだまに成ってますよ!」
有坂さんは目を見開き茶碗の口元を指で拭い、菓子を乗せていた紙で指を拭く。
最初のコメントを投稿しよう!