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母さんはルンルンと嬉しそうに、廊下で学校に連絡をしていた。
「ごめんな、優里斗」
「何が?」
まさか今までの喧嘩の事か?とか、離婚話か?とか色々な考えが頭の中を巡る。
「お前、明日から藍澤さん家で暮らして貰う事に成ったから」
……あ、いざわさん?
「誰?てか何で?」
パン以外のものを口へ運びながら、父さんの答えを待つ。
「父さんの高校時代の後輩で、母さんの“愛人”だ。ちょっと、な……」
いきなりの、しかも父さんの口から出た“愛人発言”に思わず飲んでいた紅茶を吹いてしまった。
「んな……愛人!?」
「そう、愛人。寧ろ“元恋人”?」
再び苦笑を浮かべる父さん。意味深長な言葉に首を傾げれば、父さんは瞳を伏せた。
「今度、教えるから……食べ終わったら、荷物をまとめて置きなさい」
口元は微笑んでいるのに、声色はやけに悲しかった。
「優里斗、学校に連絡いれといたからぁ」
母さんが携帯を振りながら、戻って来る。
「母さん……何でオレ、アンタの愛人の家に行かなきゃいけない訳?」
怒気を含めて言えば、母さんは極上の笑顔を作った。
「あの人が優里斗に逢いたいって言ってたから、てへっ」
アンタねぇ、とと言いかけたが、何だか面倒臭く成り、取り敢えず食事に専念した。
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