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「大丈夫ですから、御心配為さらずとも……」
「……ッ!おでこ赤く成ってる!!」
不良は青冷めた顔で、オレの額に触れる。
ひんやりして気持ち良い手。
「本当に大丈夫ですから」
にこりと再び言えば、今度は赤面していた。
青く成ったり、赤く成ったり、忙しい人だな……。
「鳴チャンー、どこ行ったんー?」
「あ……ヤバッ!!今度改めて謝罪させて!!」
不良は食堂の奥へ、逃げるように駆けて行った。
「何だったんだ……?」
オレと大知は同時に首を傾げ、食堂を出た。
涼しい風がオレ達を包み、未だ微かに残る春の陽気が心地好い。
グラウンドでは体育が行われており、陸上競技か……持久走をしていた。
「優里斗、俺バスだから、ここで……バイバイ」
大知は少し悲しそうに笑い、ひらひらと手を振る。
「うん、バイバイ。試験……受かると良いな!!」
オレは成るべく明るく言い、大きく手を振った。
帰り道思う事は、ただ一つ。
(西院寺、楽しそうだな……)
校舎を取り囲む緑を眺めながら、家へと急いだ。
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