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まさかこの歳に成って、一目惚れなんて……とか自己嫌悪に陥ったが、どうやら俺だけでは無い様子。
現に俺を羽交い締めする雪もまた、優里斗に一目惚れしている。
双子だからか、分かりやすいだけなのか、雪の考えてる事は大体分かる。
似たような思考を持って産まれたから。でも、全ては分からない。
「あ、そうだ!七海ー、今日の夕飯、オレが作ったから」
嗚呼、何て可愛いのだろう。こいつは。
「毒盛ってねぇよな?」
憎まれ口しか言えない自分が、嫌に成る。
「誰が盛るかっ!つーか盛ったら盛ったで、仕返怖そうだし、やらねぇよ!」
他愛も無いやりとり、それだけでも……俺は幸せに成れるんだ。
「優里斗くん、七海帰って来たし、そろそろ準備しよ」
雪が俺から離れ、優里斗とキッチンに向かう。
「七海、手ぇ洗っときなよー」
言われなくとも。汚い手で食事出来るかってんだ。
俺は足早に洗面所に向かい、蛇口を捻りながら鏡を見つめた。
ぶっちょう面した、“藍澤 七海”が立っており、ちょっと口元を緩めれば、“藍澤 雪海”に見える。
不思議な感覚に溺れていれば、優里斗の声が響いた。
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