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あぁームカつく。
何がムカつくかって?雪の態度に決まってんだろ。
何が“上の子は下の子に宝物を奪われる運命”だよ。
苛立ちながら自室へと戻れば、控え目なノックが響いた。
「七海、入るよ」
優里斗……。
無視をすれば、カチャリと扉が開く。
「怒ってる、よな?」
当然、そうに決まっている。
しかし、優里斗に怒っている訳では無い。
「だから何だよ。雪の代わりに謝るってか?とんだ溺愛ぶりだな」
怒りに任せた悪態しか出て来ない口に、情無さと悔しさが溢れる。
「違うよ。その……“上の子”とか“下の子”とかそんなの関係無くて、何て言うか……オレは“子供の玩具”じゃ無いからさ。安心して……?」
不思議な言葉に飛び起きれば、手を広げる優里斗が立っていた。
「七海、遠慮しなくて良いんだ。“上の子”だって欲しければ、欲しいと言えば良い」
どうして、こいつはこうも俺が欲しい言葉をくれるのか。
俺は優里斗に抱きつき、嗚咽を漏らした。
優里斗の言う通り、俺はお前が欲しい。
“優里斗”が欲しくて欲しくて堪らないんだ……。
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