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「俺と雪は双子だけど、少しの時間差で俺が兄貴だろ?だから、我慢が必要な時も多少なりとも有った」
ベッドに二人して座り、俺は優里斗の手を握り絞めた。
「それで、心の何処か深い所で、雪を妬んでた」
優里斗は黙って話を聞いてくれて、何だか有難かった。
「俺も“母さん”が欲しいのにって」
「……マザコン?」
口を開いたかと思ったら、怪訝そうな顔で呟いた優里斗をグーで殴る。
「違う。俺達の母さんは、俺達が十歳に成る前に死んだんだよ」
そう言えば、優里斗はごめんとうつ向いた。
「謝んなくて良い」
つい何時もの癖で冷たく言い放てば、優里斗の表情が曇る。
「何で、何でそんな顔して言うんだよ」
不意に感じた優里斗の体温。
抱き締められていると気付いたのは、目の前に優里斗の頭が有ったから。
「オレは“母さん”には成れないけど、さ。特別にオレが代わりに、甘えさせてやるから……さ。泣かないでよ」
ポツリと漏らされる言葉達に、頬を伝い優里斗の漆黒へと落ちる涙。
今日くらい、泣いたって良いよな……母さん。
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