これまでも、これからも、

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  「‥わ、もう 息白くなるんや!」 「ははっ、ほんまやなあっ」 スタジオを出て帰路を 2人で歩く。 ニュースでも、 今日は一段と冷えこみます。 って、言ってたもんなぁ、 ‥まあ、俺はそのおかげで 重ね着をしてきたから そこそこ暖かいねんけど、 「‥っ冷た‥」 不意に軽くぶつかった、ひなくんの手は冷たくて。 「ひなくん、寒いんですか? めっちゃ、手え冷えてる。」 そのひなくんの手をとり温めながら、この人が、冬の服選びのセンスがなかったことをひとり思い出した。 「ちょっとやけどな? ‥りょうの手は、 暖かくて気持ちええね。」 俺の手を優しく握って、 いつもの人懐っこい笑顔で そう言うてきた。 ああ、もう、その笑顔。 「じゃあ‥、ずっと、 手え握っときます。 はよ、家に帰って温まりましょ?」 「‥ん。ありがとぉ、」 ひなくんの手を握ったまま ポケットに入れる。 そうしたら、ほら、また、 照れくさそうに笑って。 キスでけへんのがもどかしい。 早く、俺と彼の2人だけの 空間が欲しい。 そう思えば思うほど、 歩くスピードが速まってまう。  
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