しあわせバカ

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  「信五は‥どうなん?」 詰まった言葉が出て、 一緒に訊いてもうた。 信ちゃんが答えを言わへんなんて、とうに分かっているのに。 ほら、相槌さえ返ってこおへん。 そりゃあ、そういう行為をしている時は、羞恥心もどこかへ飛んでいっている訳やから、難なく言ってくれるで? でも、 いくら電話とはいえ、 誕生日だからとはいえ、 普通の会話中じゃ、 言ってくれへんやんな‥‥ 甘い空気がニガテな人やしね‥ 「欲張りすぎた、かなぁ‥」 相手の気配がないそれを耳に当てたまま、小さく呟く。 あかんなあ、反省しよ。 口にストッパーでもつけなあきませんね、きっと。 そんなプチ反省会を頭の中で 繰り広げながら、 影が見えない信ちゃんを 呼びかけようと口を開いた そのとき。 ― ぴんぽーん‥ まさか、なるとも予測していなかったその音に、危うく、信ちゃんと僕を繋いでる携帯を 落としそうになってもうた。  
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