しあわせバカ

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  時間を見ると、だいぶ、 世間一般でいう深夜な時間。 「誰やろこんな時間に‥」 脳のはしにかすめた“お化けさん”という言葉を、軽くスルーしてドアへと向かう。 お化けさんやなかったら 酔っ払いの人か、 単に非常識な人、か。 わ、ほんまに酔っ払いとかやったら、どうしましょ。 はやく、信ちゃんと 会話したいんですけどね‥ 何の音沙汰もない携帯に 小さくため息を漏らして、 ドアノブを握った。 ― がちゃ‥ 「はい、どちらさ‥、ま‥」 しかし、小さな悩み事も意味はなく、そこに居たのは、お化けさんでも、酔っ払いでもありませんでした。 「‥‥遅いわ。」 いつからそこにいたのか、 マフラーや手袋の防寒具をして 赤い耳に携帯を当てたまま 座って此方を見上げている。 互いに通信中だったため、 そう言った、信ちゃんの声は 電波を通って僕の耳元に届いた。  
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