別れと願い

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………暖かいなぁ………。   ……ん?   あの声は……!?   …ご主人様!!   『ご主人様…。 申し訳ありませんでした…。   私も…奥さんと赤ちゃんを見守る事が出来ませんでした…。   本当に申し訳ないです。』   そう思いを口にした所、どうやらここの世界では私の言葉がわかる様子。   『…長い間、苦労を掛けたね…。   お疲れ様だったね…。』   と、私を撫でてくれる、久しぶりに見たご主人様が、お声を掛け撫でて下さいました。   嬉しくってご主人様にジャンプすると、ご主人様が倒れて、昔の様に遊んで下さいました……。   しかし目の奥は、不安げな色をしておいででした…。   『そうですよね…。 奥さんと赤ちゃんの事が心配ですよね…。』 私は不意にご主人様に話し掛けた…。   『あぁ…。 心配で心配で… 心が張り裂けそうだ!   あそこの不思議な井戸を覗いてごらん…。   下界が見えるから…。』   …言われるがまま、私は不思議な井戸を覗いてみました。   そこにはご主人様を亡くしてから、黒い服しか着なくなった奥さんと、腕の中には小さな赤ちゃんが居ました。   奥さんは泣きながら、近所の者と一緒に、私のお墓を作ってくれて居る様子…。   『淋しいだろうさ…。 …飛鳥が来て20年と少し…… ずーっとみんな一緒だったんだから…。   それなのに俺には先旅たれ、お前までここに来てしまったんだから…。』   私の頭を撫でて下さいながら、そう話すご主人様…。   『あぁ…。 やっぱり悲しい思いをさせてしまったんですね…。 目も真っ赤になって……。   泣いて下さったのですね…。』  
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