別れと願い

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『俺にはこれから、課せられた宿題をしなければならないんだ…。   飛鳥… あの子の名前はなんと言うんだい?』   ご主人様には、不思議な井戸から見える奥さんと赤ちゃんの声は聞こえませんでした……。   私は耳が良いので微かに聞こえました…。    「…あなたが産まれて来るずーっと前から、あなたにはお姉さんが居たのよ。 『飛鳥』 と言う… 犬だったけれど、私達夫婦にとって 『飛鳥』はかけがいのない私達の宝物(子供)だったの…。   だから……… …そうね。 あなたの名前は 『晴香(はるか)』! 『飛鳥』と『晴香』 ………とても良い名前でしょ…………。   あなた………。 飛鳥………。 …そう…… 思うでしょう…。」   まるで私を見ているかの様に、空に向かってそう話した言葉を、ご主人様に全てお話ししました。   するとご主人様は大変喜び 『赤ちゃんの名前は 「晴香」か!! …良い名前だ!   私もそうしょうと考えて居たんだよ…。 『あすか(飛鳥) はるか(晴香)   うん!! 良い名前だなぁ……。』  ご主人様は下界を見下ろしながら、涙をいっぱい目に溜めながら、震える声で、力強く私を撫でて下さいました…。   『ん? …なんで飛鳥には下界の声が聞こえたんだ?』   不意にご主人様は言いました。   『私が犬だからですよ。 耳も目も鼻も、人間よりも優れて居るのです…。』   …何故かご主人様は考え事をしながら下界の奥さん達を見つめて居ました…。   ……そう、この後、ご主人様は私にこう宿題を出されたのです…。    『お前のこれからの勉強は、あの子(晴香)を守る事だ! 妻だけなら、やっぱり不安だ…。   どうだろう…。 聞き入れてはくれないか?』   ………私にとって、ご主人様の命令は絶対だ。   もちろんすぐさま 「はい!」 と答えたい……。   でも私には入れ物(体)がない…。   そう渋って居ると、天の方が現れました…。  
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