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『食卓』
「あれ、珍し~。それ、手作り弁当?」
涼くんが俺の肩ごしに言った。
背中に乗るな、重いから重いから。
「たまには。最近ファミレスとかコンビニ弁当ばっかだったし」
紺の長方形のふたを外せば、中には手作りの料理。
頑張った、俺。
冷凍食品なんて入ってないもの。
「そうだ、九条は?」
「休みだって。さっきメールきたよ」
あの、カラオケで会って以来、嵐くんは俺を避けている。
いちお、メールでの会話はしてくれるけれど、学校で会っても目を逸らされる。
別に、あいつが嵐くんのなんだろうが気にしていない…のにな。
「なぁ、オレっちにもそのだし巻き玉子ちょーらい?」
「だし巻きじゃないよ。玉子焼き。砂糖入りだけど?」
「いーよ、くれ。それにしても一人暮らしって、そんなこともしちゃうのー。偉い偉い」
ニコニコ笑いながら頭を撫でてくる涼くんのみぞおちに、軽く右ストレートを食らわしたら、涼くんは黙りこくった。
あ、ごめん、痛かった?
「嵐くんがいないと、なんかおいしくない」
今朝は珍しく早く目覚めて、嵐くんの分のお弁当も作ってきたのに。
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