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『嵐くんというオトコノコ』
空は快晴。
俺のこころは穏やかでなく。
嵐が吹き荒れているのは、嵐くんのせいだ。
「でな、でな?ちょ、おまっ、聞いてんの?」
「なんとなく聞いてる」
「なにそれなにそれっ!ひでぇ」
ぷぅ、とガキくさい仕草をして、嵐くんは机に突っ伏した。
「嵐くん、だんだんカマくさくなってんね。君ゲイでしょ?」
「そォだよ、ゲイですともさっ。にゃにが悪いっ!」
「…同性愛とか、悪い?」
口の端を上げて言ってやったら、むすっとした表情が返ってきた。
それがむしょォに可愛らしくて、ついつい茶色の猫っ毛の頭を撫で撫でしてしまう。
「髪傷んでるね。トリートメントしてんの?」
「最近面倒でさぁ。あ、でもセフレがたまにやってくれんだわ」
「セフレって、やっぱ男?」
「うん。彼氏、とも言うかね」
男とか受け付けたくないね。
氷点下ブリザードが吹き荒れる俺のこころ。
「彼氏って一本に絞るもんでなくて?」
「彼氏間でマワされんのとかいいよ。一本だけじゃ足りないから」
「………」
絶句とはこういうものだ。
おいちゃん、ビックリだよ。
「あ、なんなら試す?今からヤる?」
大歓迎と言って笑う嵐くんを殴りたいと思うのは、本能か?
「馬鹿。俺は嵐くんの友達。友達はそんなことしないんだから」
溜め息をつきながら言うと、嵐くんの顔がへにょん、と曲がった。
あ、笑ってるんだね。
「ありがとー。うん。友達。そーゆうこと言ってくれんの、お前だけ」
あらら、泣いちゃった。
よしよし。
君はいいこだよ。
嵐くんは男の子が好きという性癖だから、周りから変な目で見られたり、興味本意でセクハラされたり、ずっと友達がいなかった。
同じ小学校だったから、噂は知っていた。
嵐くんが俺ん家の隣に越してきて、友達になった。
そして知ったのは、このこ、凄く普通の子。
そこから仲良くなって、今はおんなじ高校で同じクラスなの。
「嬉しいからチューしてあげる!」
「わ、止めなさい嵐くん!」
襲ってくる嵐くんを躱すと、『なんでぇ?』と不満そうな声が返ってきた。
君は可愛い可愛い僕の親友だから。
それが理由だよ。
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