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「何、それ?セフレ?」
コレコレ、と人差し指でちょんっと突くと、嵐くんは身を捩って顔をしかめた。
ぶさいく。
「…ちがっ」
「隠さないの。つーか話せ。キスマークも新しいし、これ付けたん男(セフレ)だろ。浮気したのバレた?こういう性癖?なんなの?」
取り敢えず、寒いから服を着させてあげた。
嵐くんは不服そうな顔をして俺を見上げてくる。
「なんでお前にそんなこと言わなきゃなんないわけぇ?」
「親友だから。…ってのは建前で、その傷が目障りだから」
だって嵐くんは、自分に傷を作っていい人じゃない。
他人にも傷を作らない嵐くんが、どうしてこんな風になるか知りたい。
「…思い通りにいかないから、だって」
「…セックスのとき?」
二時間目のチャイムが鳴った。
こうなりゃサボりだ。
「それもあるけど、他の男と付き合ってっからだって。セフレって約束してエッチしてんのに、皆彼氏面する。この痣は横浜のセフレにつけられたの」
…いや、どこの男とか言わなくていいから。
なんか、シュンとしてる嵐くんをほっとけなくて、頭をわしゃわしゃと撫でてあげた。
そうしているうちにギュッと抱きついてきた身体は震えていて、声を押し殺して泣いてるのがわかった。
「怖かったね。嵐くん。今度、そいつのトコ、一緒に行こう。そいつを切るも切らないも、嵐くんの判断だけど、暴力奮うような奴、俺じゃないと止めらんないし」
こう見えても強いからね。
コクコクと頷く嵐くんを抱っこしたまま、二時間目は終わった。
男同士って大変だね。
セックスに暴力が使われちゃうんだ。
窓の外は透き通った青空。
俺と嵐くんは薄いカーテンの内側でシルエットになった。
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