君と俺。

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「ほら、嵐くん」 「いいの?」 足取りが危なっかしい嵐くんと手を繋ぐ。 男の子なのに小さい手。 しっとりと汗ばんだ感触が、妙に人肌を感じさせて安心する。 「もォ疲れた!あ、リス!」 只今冬眠の準備中なリスを発見。 あら、可愛らしい。 つーか、熊もいる可能性高くない? 11月にこんなんやんなよ。 「ちょ、嵐くん!?」 いきなり走りだした嵐くん。 バランスを崩しながらも、俺は手を引かれるまま走る。 「坂本のペアがいた!」 あ、あああ、嵐くん! 君って奴はぁ! ズザー…いや、ドシャーって音とともに、俺と嵐くんは急な斜面を落ちてしまった。 前見ないから! 「いってぇ!」 「どこよ、ここ!?嵐くんの馬鹿野郎!」 「け、携帯っ」 嵐くんが携帯を覗き込むが、勿論山中だから圏外。 俺は足を捻ったらしい。 すっげぇ痛い。 「ご、ごめん」 「いーよ、別に」 落ちた場所は木の根本。 丁度ウロになってる。 「先生来るまでまとう。じっとしてなきゃダメ」 「はい…」 嵐くん、元気ないな。 反省してるのかな。 いや、ないかソレ。 ホーホーホー。 寒気がした。 いつの間にか寝ていたらしい。 辺りは真っ暗で、ふくろうの鳴き声がする。 嵐くんは俺に抱きついて眠っている。 重いぜ、このフォモ野郎。 「んっ、ふぁーっ!」 あ、嵐くん起きた。 嵐くんは目をパチパチとしばたかせ、キョロキョロと辺りを見渡した。 「どしたの?」 「こっちこっち」 足を引きずりながらウロの外に出る。 嵐くんの指差した先には、朝靄に包まれて、静かに、幻想的に空に浮かび上がるお日さまがあった。 つーか、そんな寝てたの俺ら。 「綺麗だねっ」 「嵐くん、開き直るなよ」 苦笑いしながらも、無邪気にあどけなく笑う嵐くんの頭を、くしゃくしゃと撫でてあげたら、気持ちよさそうに目を閉じた。 その数時間後、先生たちは血相を変え、迎えにきてくれた。 …けれど、俺らがいた場所は、宿泊先のコテージの真裏だった。 どォりで木が横に生えていた筈だ。 たくさん説教を食らって、足の痛みも限界を食らって、二日目ならぬ三日目終了。 嵐くん、元凶は君なんだから、ぐーすか寝てるんじゃねぇ! なんて、帰りのバスで膝枕してあげてる嵐くんを、殴ろうかと思った、子供な俺。 .
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