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『北風』
「曇天ピクニック!」
「どんなんよ、ソレ。嵐くんてネーミングセンスないでしょ?」
「だって曇ってんじゃん」
「取り敢えず、嵐くんから曇天て単語が出ただけよしとしようかな」
「ないわ~」
屋上での昼休み。
ランチは購買で勝ち獲た焼そばパン。
ホントはカレーパンが良かったんだけど。
「このカレーパンおいしーな?ありがとな?」
嵐くんにちょうだいって言われちゃったから、泣く泣くあげた。
意思が弱い俺。
「今年も残すところ21日ですかぁ。嵐くん、来年の抱負は?」
ビューと北風が吹いた。
いくら暖冬といえども寒い。
うーっ。
「来年の抱負なんざ来年考えればいいんだよ。そういうお前こそ?」
「文武両道」
俺がそう答えると、嵐くんは不服そうな顔をした。
「えー、達成できてんじゃん。これ以上は求めちゃ駄目だろ」
「じゃあどうすりゃいいの?」
「ヒトに聞くなよ。あ、九条嵐をもっと敬うとか?大切にするとか?」
「…。それ、自分に都合よくない?そっか、嵐くん、寂しがりやなんだね。よしよし、可愛いなぁ」
ぎゅうっと抱き締めてあげると、嵐くんは声を立てて笑った。
嵐くんなんか抱き締めてるから、ホモだと思われてるかもね。
まぁ、嵐くんとなら構わないけど。
冷たい北風が吹く中、寒さを凌ぐように、俺と嵐くんは身を寄せあって、暖まってました。
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