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どこからか金木犀の香りが漂ってくる。
カフェのオープンテラスを流れていく風は涼しく、秋の香りを含んでいる。
「 瑠璃ちゃん、モーニングBセット2つ、あがったよ。テラスの五番テーブルに 」
瑠璃は、
「 はい!マスター … じゃない。趙雲さん 」
と、ペロッと舌を出して笑顔で頷き、オーダーの品をテラス席に運んだ。
ここは高原の町。
無双高原リゾート。
その一角にあるオープンカフェ形式の喫茶店
『 白馬館 』
だ。
この『 白馬館 』 は、まだ若いマスターの趙雲と、3ヶ月ほど前に都会からやって来たばかりの従業員 ・瑠璃 ( るり ) が切り盛りしている。
若いマスターと、これまた若い女性従業員がいる店
という事で、地元の人たちはもとより、観光客からの評判もよかった。
モーニングのお客様が一段落した頃。
瑠璃は、ふと、テラスの一角を見た。
そこには、一人の男の人の姿が。
イーゼルに立てかけたキャンバスに向かって、しきりに絵筆を走らせている。
瑠璃は、一旦中に戻ると、マスターから受け取ったお盆を持って、男の人の側に行った。
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