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と、その時。
「 相変わらず、バラと蝶には目がないんですね。張こう さん 」
と、言う声が聞こえてきた。
瑠璃がその声に振り返ると、そこには小さな子供を連れた男が立っていた。
瑠璃は、二人を見ると笑顔になって
「 あ、いらっしゃいませ。劉備様。永くんもこんにちは 」
と、挨拶をする。
劉備と呼ばれた男は、一言、張こう に断ってから、同じテーブルに座ると、人のよさそうな笑みを浮かべ、
「 瑠璃ちゃん、いつものコーヒーを。それと、永にはオレンジジュースを 」
と、オーダーする。
瑠璃は、にっこりと笑うと中へ入った。
待つ事しばし。
瑠璃と趙雲が、オーダーした品を手に現れた。
「こにちは。ちりゅしゃん」
趙雲の姿を見た永と呼ばれた子供が、嬉しそうな顔になって、趙雲に飛びつこうとした。
劉備は慌てて、永を抱き上げると、席に戻る。
瑠璃と趙雲は、苦笑しながらオーダーの品をテーブルに置くと、
「張こうさんも、劉備支配人さんも、いいんですか?こんな所で油売って」
と、つぶやいた。
実は、劉備と呼ばれた子連れの男は、この無双高原リゾートにあるリゾートホテル
グリーンウィンドウ
と、温泉旅館の
緑風閣
の、オーナー兼支配人だ。
永と呼ばれた男の子は、その劉備の次男で今年3歳になる。
また、張こうさんとか館長さんとか呼ばれている、絵を描いている男は、無双高原リゾート内の美術館の館長さんである。
時間を考えると、二人共、喫茶店でのんびりしてなどいられないはずなのだが…。
「 美術館は休館日なんですよ。で、今日はここで、書きかけの絵を仕上げようと思いまして 」
と、言ったのは、張こうだった。
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