16人が本棚に入れています
本棚に追加
「 で、劉備様は大丈夫なんですか?今頃、諸葛マネージャーさんや関総料理長さんが探しているんじゃあ… 」
困ったような顔になる趙雲に、劉備はコーヒーを一口すすると
「 保育園に行きたくないと、永がぐずって。私や尚香の服を掴んで離さなかったんだ。公嗣 ( こうし。劉禅の字 ( あざな ) ) に頼もうにも、必修の講義が朝一であるとかで、早々と大学に出かけてしまったし、尚香はお客様のお見送りの時間で、永の相手は出来ないし…。で、孔明に午前中だけと断って…な 」
と、話した。
そんな劉備の心を知ってか知らずか。
オレンジジュースを飲んだ永は、トコトコとそこらへんを歩き回っていたが…。
やがて、何を見つけたのか、張こう が描いていたキャンバスの前に座り込んだ。
床の上を、しきりに触っては何かを拾い、握っては離して遊んでいる。
「 永くん、どうしたの? 」
瑠璃が永に近づくと、永は嬉しそうな笑顔で
「 りゅりねー。こえ 」
と、握っていた物を差し出した。
「 これ… 」
瑠璃の手に渡された物。
それは、
銀杏の葉
だった。
銀杏の葉は、完全に黄色く色づいてはおらず、半分ばかり黄緑色が残っている。
オープンテラスの側には、銀杏の木が五本ばかり植わっているので、多分、そこから飛んで来たのだろう。
永は、その銀杏の葉を拾っては落として遊んでいるのだった。
「 劉備様、趙雲さん、これ 」
瑠璃は銀杏の葉を見せる。
「 もう黄葉した葉があるんですね 」
「 おそらく、あの一番西の端の木だろう。あの木一本だけは雌の木で。毎年、あの木だけが早く色づくからね 」
「 瑠璃ちゃん、これからテラスの落ち葉掃除が大変だろうけれど、頼むよ 」
そんな事を言っていると
「 あー!!!∑( ̄口 ̄) 」
張こう が、突然、大声を張り上げたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!