ある、無双高原リゾートの1日

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6:00 司馬工務店   ♪ズンズンズン…ズズ…ズンズズズン…ズンズンズン…ズズ…ズンズズズン…♪   携帯から、某SF映画のテーマソングが流れた。 それを聞いて、机に突っ伏したまま眠っていた男が、目を覚ます。   「6時…か」   壁の時計を見て、男がつぶやいた。 コーヒーでも… と、男は立ち上がり、隣の給湯室へ向かって歩き始めた時。 カチャリ と、ドアが開いて、男によく似た若者が入って来た。   「おはようございます。仲達兄さん」 「おはよう。幼達。今朝は嫌に早いな」 「朝一の電気工事が入っているんですよ。ホラ…無双高原スキー場第1ゲレンデ近くのペンションの」 「ああ、半月後に引き渡し予定のペンションか。コーヒー飲むか?」 「いただきます。仲達兄は、泊まりだったんですか?」 「今日の午後、打ち合わせ予定のクライアント様にお見せする図面の制作に、手間取っちまってな」   仲達は、そう言いながら、弟で電気工事士の幼達に、コーヒーを渡した。 幼達はそれを受け取ると、   「でも、仲達兄。一度家に帰った方がいいんじゃないですか?その紫色のシャツ。シワだらけですよ 」 「帰宅すれば、事務所に泊まった事を、春華に根掘り葉掘り聞かれるんだ。それに、どうせクライアント様と会う時には、ジャケットを羽織る。このままで…」   仲達がそこまで言った時。   「あなた…」   との声と共に、ドアが開いて、中に入って来たのは…。   数時間後。 クライアント様に図面を説明する仲達の頬には、大きな絆創膏があったとか。
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