ある、無双高原リゾートの1日

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6:30 無双高原高校 弓道場   しん… と、静まり返った朝の空気の中、弓弦を鳴らす音が響く。 タン… と、的に矢が当たる音もする。   真剣な表情で、弓を引く弓道部員達の中に、白髪の老人が一人…。 新野(あらの)神社の神主で、弓道部の特別師範である黄忠だ。   「黄忠師範、流石ですね」 「何の、これくらい、まだまだじゃよ」   口元に笑みを浮かべて、しゃべりながらも、黄忠の放つ矢は、迷わず的の中心に吸い込まれていく。 一本…また一本… と。   が… 射る順番待ちをしていた数人の部員達が   「元気だよな。師範」 「もうかなりの年だろう?」 「その内、ぶっ倒れるんじゃねぇの?年寄りの冷や水ってヤツで」   と、笑いながら小声で言ったものだから…   「何? そこのこわっぱ、今、何て言った?」   ギクッ!!   部員の一人が、弓を構えたままの黄忠の姿に真っ青になる。  「し…師範、私たちは何も…」 「聞こえとるわ!」 「お…お許しを…」   黄忠は、にやりと笑うと、弓を下ろしながら、 「本日の放課後の稽古はなし!」   と、つぶやいた。 やった~ と言う、部員達の嬉しそうな声が響く。 が、それもつかの間。   「その代わり、部員全員、うちの神社までマラソン。ついでに境内の草むしりじゃ!全ての草を抜き終わるまで帰さんから、覚悟しとけよ!」 「そ…そんな~」   ケタケタ笑いながら、弓道場を後にする黄忠の姿を眺めつつ、 いらんことを言わなければよかった と、心底後悔する部員達だった。
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