最後のメッセージ

2/16
11296人が本棚に入れています
本棚に追加
/897ページ
「大丈夫?疲れないかい?」 「うん、大丈夫。ありがとう」 駿は息を切らし乍後ろを歩く奈央を気遣いながら、ゆっくりとした歩調で畦道を進んだ。 二人が目指しているのは、風の丘だった。 早朝に家を出たが、初夏の日差しが木々の間から降り注ぎ、上昇してきた気温に額には薄っすらと汗が滲んできた。 「休まなくていい?」 駿はまた奈央に聞いた。 「うん、大丈夫」 息を切らしてはいたが、頬には赤みが指し微笑むその顔は健康そのものだった。 その姿に駿は反って胸を締め付けられた。 目の前の奈央の姿を見ていると、奈央が本当に病気なのか信じられなかった。 先日、医師から告げられた言葉が夢であったらと思った。
/897ページ

最初のコメントを投稿しよう!