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「大丈夫?疲れないかい?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
駿は息を切らし乍後ろを歩く奈央を気遣いながら、ゆっくりとした歩調で畦道を進んだ。
二人が目指しているのは、風の丘だった。
早朝に家を出たが、初夏の日差しが木々の間から降り注ぎ、上昇してきた気温に額には薄っすらと汗が滲んできた。
「休まなくていい?」
駿はまた奈央に聞いた。
「うん、大丈夫」
息を切らしてはいたが、頬には赤みが指し微笑むその顔は健康そのものだった。
その姿に駿は反って胸を締め付けられた。
目の前の奈央の姿を見ていると、奈央が本当に病気なのか信じられなかった。
先日、医師から告げられた言葉が夢であったらと思った。
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