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奈央は知っていた。
命は、尽きるその前にひととき煌めき輝く時がある事を。
奈央が自分の身体を容赦なく蝕んでいく、悪魔の細胞がまた広がり始めた事に気付いたのは、手術をして一年が経った頃だった。
奈央は「やっぱり」と心で思った。
「その時がきた」のだと。
しかし、そこに絶望はなかった。
奈央は駿には何も告げず、これまでと変わりなく過ごそうと決めた。
今の幸せな時間を変えたくなかった。
出来るなら、みんなが笑顔でいる時に自分だけふっとかき消えてしまいたかった。
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