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一年前に癌だと告げられた時は死を恐れ動揺し、駿や真子と別れなければならない辛さに、胸が引き裂かれる様だった。
まだ自分の中で、死が恐怖でしかなかったから、孤独でひとりぼっちで、暗闇の中に放り込まれる様な気持ちだった。
でも今は、何もかもが違って見えた。
人は誰しもいつか死を迎える時がくる。
遅いか、早いかの違いだけであって、みんな年をとり老いて肉体は滅び、そして死んでしまう。
奈央は、自分が生きて過ごしてきた年月を思った。
駿と言う男性を心から愛し、それ以上の愛を駿から沢山貰った。それは奈央を満たし勇気づけ生きる喜びを与えてくれた。
そして自分に関わった全ての人達の愛で、今の自分があるのだと…。
十分に愛し、十分に愛された。
他にもう何も必要ないと、奈央は思った。
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