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「すっごい、いい眺めーっ」
案の定、彼は飛び跳ねて喜んだ。
良かった、連れて来て。クルクルとよく分からない踊りを舞う彼を見ながら、俺は心の中で微笑んでいた。
高い崖の上、そこには一面白い花が咲き乱れ、甘い香りが鼻をくすぐる。そして今日は雲一つない最高な天気。俺の目の前には今、青と白の2色しかなかった。
「よくこんなとこ見つけたねっ」
白い絨毯にねっころがって彼は言う。
最初ここを見つけたとき、誰かに教える気は更々なかった。なのに今じゃこのザマだ。
「さて、そろそろ戻ろっか」
彼は立ち上がり微笑んだ。寝転んだせいで頭が花びらだらけ。かなりのバカ面だ。
俺は返事の代わりに一声吠える。
いつの頃からだろう。こんな風に思えてきたのは。俺の中に流れる血のせいかもしれない。けれど、そうではないと思いたい自分がいた。
彼は俺の背中にいそいそとよじ登る。少し体勢を低くして登り易くしてやった。
「よぅし、出発ーっ」
俺はそれを合図に翼をはためかせる。すると風が巻き起こり花びらが舞う。ちょっとした雪のようだった。背中の彼はあまりの綺麗さに息を飲む。
…で、俺が調子に乗ってバサバサやると、花が可哀想だと頭を叩かれた。
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