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気持ち悪い浮遊感のせいで俺は不機嫌だった。しかも俺を召喚したのは目の前にいるガキのようだ。誰だ、勇者とか言ってたヤツは。
辺りを見渡そうにも狭っ苦しい部屋の中で身動きが取れない。そんなすし詰め状態の俺を人間たちは口をポカンと開けて見つめていた。
見せモンじゃねぇっ。俺はムカついて大きな声で吼えてやった。
悲鳴を上げ、面白いように人間たちが逃げ出していく。
「なんてことするんだよっ」
声がして正面に向き直る。先ほどの少年が怒っていた。
「人を脅かしたらダメだろっ」
俺はそっぽを向いて聞こえないふり。
俺様に命令するとは一千年早いわっ。よーし、もう一度吼え…
「吼えちゃダメーっつ!!」
吼えてる途中で遮られ、最後のほうが変な声になる。なんか圧倒されてしまい、俺は無意識のうちに首を引っ込めていた。
「絶対、人を脅かしちゃダメっ」
少年は本気で怒っていた。とりあえずこの場は頷いておこう。
「ホントに分かってる?」
うぅ、バレてる。俺は必死に首をブンブンと縦に振った。
「良かったぁ。じゃあ今日のはもう帰っていいよ。次はちゃんと広いとこで召喚してあげるからね」
コロっと笑顔になり、少年は言った。俺もこんな狭いところに長居はごめんだ。
そうして、また視界が歪んだ。
あ、名前を聞き忘れてしまった。
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