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ふぇ? ココ、どこだ?
大きなあくびをひとつして、俺は自分の置かれた状況を確認した。外で、芝生の生えた広場で、向こうには池も見える。
ふと足元を見ると、小さな子供が満面の笑みで見上げている。
…はっ、俺、ラクトに呼び出されたのかっ。ぐっすり昼寝してて気づかなかったなんて、ちょっと恥ずかしくなった俺はソッポを向いた。
「ねぇ、聞いて聞いてっ。今日、授業で命令の仕方覚えたの。復習するから付き合ってよ~」
命令の仕方なんて、誰が好き好んで付き合うかよ。俺はソッポを向いたままため息をついた。
「えっと、まずは…」
そうラクトはつぶやくと、急に黙りこくった。…なんか、気になるじゃんかよ。視線だけラクトのほうを向くと、小さなメモ帳を真剣に見ていた。
ラクトは視線に気が付いて、俺においでおいでと手を振る。ついついその誘いにのってしまい、メモ帳のほうに顔を近付けると…ガシッと顔を掴まれた。
「まずは、自分のほうをちゃんと向かせるっと」
ぐあっ。すんごい嫌なのに、目を反らせないっ。
「次に、命令は短く分かりやすく。この棒投げるから、取ってきてね。とうっ」
ラクトは木の棒を全力で投げた。
ヒューン…ポチャン
『あ。』
木の棒はむなしく池に落ちた。
俺、どうすればイイんだろ。
「えっとぉ…、取ってこーいっ」
ラクトはビシっと池を指差しそう言った。
えー、嫌だよ俺~。
「ちゃんと取ってきてっ」
分かったよっ、行けばイイんだろ行けばっ。だからそんな泣きそうな顔すんなってっ。俺は慌てて池へと向かった。
…どの棒だよ。なんか色々浮いてて全然分かんないんだけど。仕方ない、適当に持って帰るかぁ。
池に顔を突っ込み、それっぽい棒を拾うと、そそくさとラクトのとこへ戻った。
ラクトはメモの最後の行を読む。
「んと、命令に従ったら、めいっぱい誉めてあげる…か。取ってきてくれて、ありがとねガっちゃんっ」
そうして、ヒシっと俺の前足に抱きついた。うーむ、なんかメチャメチャ喜んでるみたいだし。ま、いっかぁ。
しみじみとラクトを眺めたあと、俺は再び大きなあくびをした。
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