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2年経つ頃には田中は残り1人になった。
最後の田中を殺すべく、男は拳銃を手に入れた。グレーのトレンチコートを着て、右のポケットに拳銃を隠した。
場所は原宿。深夜でも煌々と光る街に男はいた。
(自分の尻は自分で拭く。これは自分で終わらすべきこと。)
男は頭の中で何度も呟いた。
男はスクランブル交差点で信号待ちをしていた。なるべく真ん中で行おうと心に決めた。
右ポケットに入った拳銃の引き金に触れ、後戻りは出来ないことを確認し、安全装置を外した。
男は風邪に似た怠さを感じていた。手は震え、自分が立っていることさえ怪しくなる。
(こんな調子でどうする! 歯を食いしばれ! 目を覚ませ! お前はこれほどまで軟弱な人間なのか? 自分の始めたことすら忘れたのか! 忘れたのか!)
弱る自分の精神を鼓舞すべく、自分を罵った。
信号が青に変わり、男は歩き始めた。引き金に指を掛けないように銃を握った。流れる人の波に逆らわないように歩き、交差点の中心部分にたどり着き、立ち止まった。
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