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家へ向かう途中に小さな公園がある   昼過ぎになると親が子供を連れ、そこに集まる   今日も例外無く、団体さんがいた   その中に見覚えのある子供がいた   正確に言えば、だいたいの子供は見覚えがある   しかし、男にとっては懐かしいその顔が逆に新鮮に見えるのだった   男が立ち止まってその子を眺めていると、一人の女が男を手招きで呼ぶ   「こんにちは。お散歩中ですか?」   「まぁそんなとこです」 「お仕事柄、息抜きも必要でしょうからね」   「そ、そうですね」 男は苦笑いを浮かべる     「あの…マチコちゃん…」   「あぁ、おかげ様ですっかり元気になりました。お医者さんは奇跡だって」   「本当に良かったですね」   「えぇ。あの子ったら夢の中で『勇者さん』に助けてもらったとか言ってて…本当に子供って無邪気だなと思いましたよ」   女に合わせて男も笑う     それから一言二言会話を交わし、男は家へと戻っていった   「奇跡ってあるんだなぁ」   男はすっかり自分の描いた作品のことなど忘れていた ただただ目の前の奇跡に関心を寄せるだけだった
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