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コーヒー二杯分とはいえ、男にとっては安いものではなかった
あのような話だと分かっていたら水だけで我慢していたのに、と変な言い訳が頭に過る
男の横をスーツ姿の男がせっせと走っていく
「あの人は仕事が楽しいのかなぁ…」
男は幼い頃から憧れの職業だった漫画家になれた
そしてふと思う
なりたい漫画家になってやりたくないことをしてる自分と、なりたくなかった営業マンになって気持ちよさそうに走り回ってるあいつ
どっちが幸せなのだろう
いや、無駄な考えだ
そもそもあれが彼の夢だったのかもしれない
「いまさら夢云々言うヤツなんて天然記念物なのかぁ…?」
男は立ち止まり、大型ビルに映し出された広告を見上げた
最近人気のグラビアアイドルが眩しい笑顔を見せていた
しばらくして男は自分の部屋があるアパートに着く
「ここは仮の部屋なんだ。一年もしないうちに一軒家が買えるぐらいビッグになるんだ!」と言ってから早三年が経つ
始めの頃こそ抵抗があったものの今ではすっかり「我が家」と呼んでいる
男は我が家に戻ると、自分の作品が掲載されている雑誌を手に取った
【壮大なスケールの超絶痛快ファンタジー!】
初連載時のキャッチコピーを見て思わず吹き出した
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