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「そうだよなぁ…壮大だよなぁ…壮大過ぎだっつうの…」
男はパラパラとページを捲る
確かにそれは自分が描きたい作品ではなかった
でも確かに自分が描きあげたものだ
「…そうだよな…僕がやらなきゃコイツが可哀想だもんな」
男は雑誌を閉じ、作業場と呼ぶ机へと向かった
愛用のペンを手に取った瞬間、ポケットの中の携帯が震えた
『ごめんごめん、言い忘れてたことがあってさ』
「なんですか?」
男は自身の少しモチベーションが下がったのが分かる
『いや、さっきあんな話しておいてなんだけど…作品のこれからについてで…』
「あぁもう気にしないでくださいよ。僕は僕なりに頑張りますから。伏線だってなんとか回収しますよ」
『いや悪ぃね。設定とかもあまり気にしなくていいからさ』
男は少しムッとした
いくらなんでも適当過ぎやしないだろうか
この時は彼なりの心遣いなのだろうと思うしかなかった
「…そうですね。いっそのことギャグマンガにでもしちゃいますか!」
『ハハハ、それもいいね。それじゃ残り5話分の原稿宜しくね』
「…え?今なんて…」
『ん?残り5話って…ああ、そうそう。これが伝え忘れたことなのよ』
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