カウントダウン

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男は決意した   これを漫画家として最後の作品にしようと それが唯一自分に出来る反抗なのだと   実際に困る人間などいないだろう   それでもこのやりどころの無い気持ちを落ち着けるためにそう思うしかなかった 「さてと…まずは前回の続きに決着をと…」   男の描く漫画は王道ファンタジーだった   世界を恐怖に陥れる魔王を倒すために主人公が村を飛び出した、という話   しかし、ここまで魔王の影すら登場させていない   主人公も特別な力を身につけていない普通の青年でしか無かった そして前回の話で、主人公は新たな力を身に付けるための試練を受けようとしている所で終わっていた   「ん~…試練やめちゃおうか…」   男はペンを走らせた   結果、主人公は力を身に付けるための試練を諦めることにした     嘘のようにペンが進む   1話、そしてまた1話と終わりに向かっていく自分の作品   ほぼ言いなりになって描いていたあの時と違う   男は解放感に満たされていた   きっとこのラスト5話こそ自分の作品なんだと   それは【漫画】としては決して良い作品とは言えないだろう   いつしか男は主人公に自分を重ねていた
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