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「、本間さん、」
持ち上げた彼の顎の影から解き放たれた喉元には、長い長い傷の跡。
犯した罪を償おうと歩み出した彼だったけど、天が他人を手にかけた者を笑って赦す訳もなく、程なくして彼は病魔に今度は『犯される』側の人間となった。
湿り気が鬱陶しい黒いさらさらの前髪を掻き分け、ちゅ、とわざとらしいリップ音。
座って同じ目線になって、いよいよ傷は鮮明になった。
包み込んだ頼りない背中に綴った『ショータイムノ、ハジマリ?』の文字がリアルとなるまで後5秒。
――水に飛び込んだ王子サマは日の出まで綺麗な人魚と踊り遊んだとさ、めでたしめでたし。
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