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ふと、思い出したものがあって携帯を取ってみた。
あの日、澄みきったおおきな目から涙をぼろぼろ流して寂しいねん、悲しいねんとすがりついてついてきたあの子は今、何をしてるのだろうか。
――あぁ、まだ撮影かもしれへんなぁ、と一瞬躊躇はしたけれど。けれどどうにもあの子が寂しがっている気がしたんだ。誰一人居ない空間の中、あの子がたった独りで何かに怯えている様が見る間に浮かんできたから。長年あの子を色んなところから見てきた自分のこの感覚はまず、間違いない。
無機質な呼び出し音は相も変わらず長い…ホンマ長いなぁ。巷じゃ待ちうたなんて洒落たものが流行っているからやってみたらと勧めてはみたけども、やっぱり機械音痴だからか。
『――……あ?なにぃなもぉ、』
眠たげな口調に少し、安心した。あの子が俺の居ない時でも穏やかに過ごせていればそれで良い。
――でも、少し鼻にかかった様な涙声が無性に気になって、むずむず、嫌な予感。
「おい、泣いとんのか、?」
『…………、はぁ?…泣いとらんわぼけ』
いつもとおんなじつっけんどん。ただ、右に左に揺れる切なげな声色を除いては、だが。
「アンタなぁ…毎度毎度ゆーけどやぁ、ホンマ素直になりぃてぇ。……なぁ、きみ、?」
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