ピーターパンの憂鬱

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長いブランクってのはなかなか埋められないもんだよなぁ。ああ、本当に長いな、…長過ぎるんだよばかやろう。 成長した。お前らは確かに成長したよ。 ただ、その分俺の『知らない』お前らっていうカタチがまた増えた、増え過ぎたんだ。…それとも俺がまだ子どものままだから? ――ああ、もうどうすれば! 黒くなったピーターパンはネバーランドに行き着くことすらも許されないらしい。 それどころか、ティンカーベルという何よりのアシストだって持てない、与えられない。自分のサイドには常に何も無いうえに誰ひとりとしていないんだ。 俺以外の6人、俺を入れた7人の強固たる絆の輪の中でこんな押し潰されそうな孤独感を現在進行形で味わっているだなんて俺は、なんて惨めで哀れな捨て犬なんだろうか! ……ほら、各々哀しい気持ちを閉じ込めつつ撮った7人では初めての変顔だらけのプリクラも、今じゃ俺のケータイの裏蓋でしか見れないある意味貴重な一枚になっちまっただろ?――大なり小なり集団なんて所詮そんなもんだ。 いくら結束を強めたところで先に待っているのは当たり前の忘却と解散。自称ピーターパンらしからぬ暗い考えだけどでも、『確かな記憶』と『永遠』なんて誰が何処を探しても見つかりやしないのさ。…だって、見つかる見つからない以前に『無い』んだから。もっとはっきり言ってしまえば、『存在しない』んだから。 教えてくれよ。俺と違ってしあわせなお前らなら、分かるんだろ? 『横山 裕』という人間はここに『存在して』いても良いのか? 決して『永遠』やら『確かさ』やらを全力で、しかも胸を張って約束なんか、出来る訳ない。 いつか必ずお前らのことなんてきれいさっぱり忘れてるよ――それが一体いつの時期になるのかを未だ知らないだけ。 目で追っていた雲の行方をいつの間にか見失って、重力に従った煙草の火が間抜けにベランダの床を赤く色付け、数瞬後には淡く溶かした。 意思と無関係の目頭の熱に唇を噛み締めながら踵を返したほぼ同時にポケットにこもる音。 『存在』を『忘れてしまっていた』ケータイを拾いあげて通話ボタンをオン。
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