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それでもいきなり押し掛けるのは苦手で、最後はやっぱり携帯に頼ることにした。
「……もしもしぃ、」
厳しい都心の寒さのせいか緊張のせいか。発信者である自分の耳でも判るぐらいに声は、不安定。
ちゃんと出てくれるんかな、夜遅いから電源切っとったらどないしよ、だなんて女々しい思案を繰り広げている最中、ようやくコール音は途切れた。
『――…きみ、』
『アンタさっむい外でずっと何しとんのよぉ?……えぇ加減うじうじしてやんと入ってきぃな、』
はぇ?、と間抜けた声が出た。ぎちぎちとぎこちない動作で目線をガラスに向ければ、チャームポイントらしい八重歯を覗かせて携帯を耳にかざす、あいつの姿。
――うわうわうわ。も、なんでやねん。
悩んでいた一部始終を思いっきり見られていたことに対する恥ずかしさが一気に込み上げてきて、たまらず背中を向けて一歩、歩みだそうとしたら、
『……なんやぁ、もしかして…バレンタイン、なんかぁ?』
電話口でさぞおもしろおかしぃてしゃあない、といった風にくつくつと笑う声が妙に腹立たしいし、図星も図星なもんだから真っ向否定出来ないのが尚更悔しくて悔しくてならない。
「なんや。悪いか」
もう言い返せやしないと逆に開き直ってみたら。
『あ。…あぁー、な、……ぁはははっ、!…うん。うん、ホンマ、ありがとぉ、な!』
声をでかくしてあんまり嬉しそうに嬉しそうに言うもんだから。携帯は構えたまま、再び向き直った。
「ちょお待っとけよ。俺、今行くから。…ちょこ、無いけど、ま、我慢せぇ」
『……んー…。せやかてチョコ無くてもやなぁ、俺は、お前だけで十分やで?、きみ、』
さらりと言ってのけた台詞のクサさにそれはそれは笑えたけれど、けれどもどこか胸の奥あたりがくすぐったくて咄嗟の照れ隠しひとつろくに出来ず、出来たのは曖昧なはにかみ笑い。
「……分かった。んじゃあ、とりあえず期待、しとけよ、?」
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ちょこは無いけど愛はある!笑
こすやまくん、きっとひなちゃんへのちょこを買う度胸は無い←
そしてひなちゃんはちょこの代わりにあまいあまいこすやまくんを頂くのです(あ
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