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二月のある日、美愛は上司に呼ばれた。
「お話というのは…」美愛は聞いた。
「城所くん、確か君は大学の第二外国語はフランス語だと言っていたよね。」
「はい。」
「実は先日だな、本社から連絡があって、うちの社もいよいよ海外に支店を出すことになった。その第一弾がパリ支店らしい。」
「つまり…私がその一号店に行くということですか?」
「その通り。」
「すみません、今すぐお返事は…」
「それは分かっている。来週の月曜までの一週間、ゆっくり考えて欲しい。決まり次第、僕の方に言ってくれ。」
「分かりました。失礼します。」
そのままデスクに戻った美愛に実咲が声を掛けた。
「美愛、何言われたの?」
「え、あぁ、ちょっとね。実咲今晩暇?そのことで相談したいんだけど…」
「美愛からなんて、珍しいね。いいよ、またいつものとこでいい?」
「うん、ホントありがとね。」
「お互い様でしょ。じゃ、また夜ね。」
そう言って実咲はデスクに戻り、お互い仕事にとりかかった。
その夜、二人はいつもの居酒屋に立ち寄った。
「で、美愛の相談って何?」
「うん、今日言われた話なんだけどね。パリに行ってくれないかって…」
「え?すごいじゃない。行くんでしょ?」
「うん、一応そのつもり…」
「どうしたの、元気ないじゃない。」
「そうかな?でも、確かに何か突っかかるというか、もちろん行きたいんだけどね、あと一歩踏ん切りがつかないんだよね…」
「高沢くんのせいじゃないの?」
「え?」
「高沢くんと離れるの、寂しいんじゃないの?」
「そんな…」
「ちゃんと高沢くんにも相談してみたら?」
「アイツにそんなこと言ったって何も変わらないって。」
「美愛…もう好きじゃないの?」
「好きだけど…それ以上に自分の道を進もうかなって…アイツはアイツなりに仕事がんばってる。今さらお互いが干渉しあったって仕方ないところまで来ちゃったのよ…」
「そっか。美愛がそう決めたんならそれでいいのかもしれないね。でも、一応高沢くんには報告しなよ?ずっと友達でいたんだから…」
「そうだね…そうする。」
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