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その時、
「へい、いらっしゃい。」
「大将、生二つで。」入って早々健吾が言った。
この声に気づいたのは実咲だった。そして、
「あ、健吾と高沢君じゃない。」と、思わず声を上げた。
この瞬間、美愛が一瞬気まずそうな顔をした。
「あれ、みんなそろって珍しいじゃん。どうしたの?」と優介が聞いた。
「今日ね、美愛の送別会なんだ。」
「送別会?城所、どこ行くんだ?」こう優介が言うと、実咲は美愛の顔を見た。
美愛はうつむいたまま、誰の顔も見ようとしない。
「美愛、言ってないの?」実咲はこう聞いた。
美愛は黙ったままうなずいた。
一瞬、その場に何とも言いようがない空気が流れた。
この空気を察してか、課長が
「君たちも一緒にどうだね?」と尋ねた。
「そうだ、そうだよ。」どうにか実咲もフォローする。
「優介、どうする?」健吾が聞いた。
「じゃあせっかくだし、お邪魔するか。」
こう優介が言うと、二人は席に着いた。
それから送別会は一時間、二時間と続いた。だがその間、美愛は一度足りとも優介の顔を見ることができなかった。
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