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それから数日が経った。依然として、優介のケータイの送信ボックスには『未送信一件』の文字が示されたままだった。毎日昼休み、優介はそんなケータイを開く。開いては見るものの、やはりあと一歩が踏み出せないままで、結局はケータイを閉じてしまうのだ。
それはこの日も同じだった。いつものようにケータイを開き、そして閉じる。一つ溜息をつくと、横にはいつの間にか健吾がいた。
「おい、その未送信一件ってなんだよ。あ、さては城所に送ろうとしてるメールだな?」
優介はギクリとした。本当にこういう時の健吾は察しが鋭いと思った。
「別に…そんなんじゃねぇって。」
「そっか。まぁお前がそう言うなら別に構わんけどな。話したくなったら話せよな。」
「そんなこと、分かってるよ。お前以外にこんなこと相談できるやつはいないからな。」
「よく分かってんじゃねぇか。」こう言うと、急に健吾は小声になって続けた。「ちょっとお前に相談したいことがあんだけど、今晩、飲まないか?」
「お前からなんて珍しいな、いいよ、空けとくよ。」優介は即答した。ついでに美愛のことも相談してしまおうと考えたのだ。
「悪いな、よろしく頼むわ。」健吾がこう言った時、始業のチャイムが鳴った。
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