終章 八月二十一日

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  「今日は別の用もある」 そう言うと討魔は司から回収した『悪魔の契約書』を目の前にあるテーブルに置いた。 「取り返してくれたのか。しかもこんなに早く。ありがとう、討魔。やはりキミに頼んで正確だったよ」 嬉しそうに言う栄助は契約書をテーブルの端に移動させた。 「それで、一体誰が盗んだのかは分かったのかい?」 「……いや。それは分からなかった」 討魔は、嘘を吐いた。 余計なことを言って栄助まで巻き込み、司のように手遅れになってしまうのが怖ろしかったからだ。 それに、司がこの件に関わっていたことは、言ってはいけないような気がした。 「そうか。………司くんのことだが、ニュースを見たよ。それに鳴海ちゃんからも聞いた」 「……」 討魔は口を噤んでしまった。
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